独立の行政機関
米SEC(証券取引委員会)は営業資格のはく奪や一時停止を審決で決める権限を持つ準司法機関だ。証券関係法に沿って規則を定める。
強制捜査権を持って規則と法を執行する行政機関でもある。「独立」といわれるのは、行政府のどの官庁にも属さず、報告する義務を持っていないためだ。議会の関係委員会にだけ報告義務がある。
日本の株式市場でバブルが崩壊した後、証券会社の不祥事(証券スキャンダル)が相次いで明らかになった。大口投資家への損失補てんなどだ。証券市場の不正を監視する独立機関を求める声が高まった。とくに米SECがモデルとして注目された。
組織
SECは審判を行う準司法権と、規則制定権を持つ。メンバーは上院の同意を得て、大統領が任命する5人から成る。
委員会の意思決定は5人の委員が行う。大統領が指名し、議会の承認を得て就任する。「不品行」以外の理由では解任できない。過去に解任された委員はいない。
任期半ばで辞任する委員が多い
任期は5年だ。ただし実際には任期半ばで辞任する委員が多い。委員長は大統領が指名し、1989年8月から弁護士のリチャード・ブリーデン氏。5人の委員のうち3人までしか同一政党員を選ふことができない。二大政党制の米国で、政治の影響力を極力排除するためだ。
本部と地方事務所
委員を支える事務局には、ワシントンの本部と地方事務所を含め約2400人の職員がいる。法令違反事件を捜査する法規執行局の定員は約300人。これ以外に、ニューヨークなど全米に9つある地方事務所も捜査をする。
弁護士や会計士を含む2598人の職員のうち、843人を不正の防止、監督、捜査部門にあてている。
捜査部門以外には、ディスクロージャーを担当する企業財務局、証券会社や取引所を監督・指導する市場規制局、投資顧問会社などを監督する投資管理局が本部にある。
権限
事務局の捜査結果を受け、委員は提訴するかどうかを多数決で決める。連邦地裁に訴えるのと、SECの職員でもある行政判事に審決を求める2つのルートがあり、いずれも罰金や不正利益の取り上げ、違反行為の差し止め、営業権のはく奪まで様々な制裁を求めることができる。
SECに刑事訴追権はない。しかし、連邦検事局に情報を提供したり、職員を派遣して協力する。